年収1,500万円、大手企業にお勤め、1棟目は東京23区の新築アパートで現在も満室。
それでも2棟目のアパートで、複数の銀行に融資を断られた方がいます。
「年収1,500万円で物件も満室で黒字。それでも断られるものなのでしょうか」
こうしたご相談は珍しくありません。そして原因の多くは、申し込んだ2棟目ではなく、すでに持っている1棟目とご自身の資産にあります。
今回は実際のご相談をもとに、銀行が年収以外のどこを見ているのか、そして2棟目に進むために何を立て直せばいいのかを、具体的な数字で確認していきます。
目次
今回いただいたご相談の概要です。
年収1,500万円、大手企業勤務、しかも満室経営。属性としては良さそうに見えます。
ただ私なら、最初に年収は見ません。まず最初に見るのは金融資産です。
この方の金融資産は800万円です。年収だけを見て多い少ないは言えませんが、すでに自宅とアパートで約1億8,500万円の借入があります。この規模に対して800万円はかなり余裕が少ない。ここが今回のいちばん大きな原因だと考えられます。
購入前は金融資産が3,000万円ありました。1棟目の購入で頭金と諸費用に1,700万円を使い、そこにお子様の教育費などの支出と株の下落が重なって約500万円減り、現在の約800万円になっています。
それ自体が悪いわけではありません。ただ次の物件まで買いたい方は、頭金をいくら出すかだけでなく、買った後に現金がいくら残るかまで決めておく必要があります。
銀行から見ると、手元の現金が少ない方はこう映ります。
問題は800万円という金額そのものではなく、次の融資を受けた後に手元資金へどれぐらいの余裕が残るかです。
では、どれくらい残しておけばよかったのか。明確な正解はありませんが、1つ目安になる考え方があります。
全金融機関に共通する基準ではありませんが、弊社が融資のご相談をしている金融機関の中には、借入に対して金融資産がどれぐらいあるかを見るところがあります。実務上の目安としては約1割程度です。
この方の場合、自宅の4,500万円と1棟目の1億3,970万円で合計約1億8,500万円。その1割で約1,850万円。さらに2棟目で購入しようとする1億1,000万円の借入も含めると総額は約2億9,500万円になるため、同じ目安で見るなら購入後に約2,950万円ある状態が1つのラインになります。
「自宅のローンも入るのですか」とよく聞かれますが、入ります。ここを見落とす方が非常に多いところです。
住宅ローンとアパートローンをまったく同じ扱いにするわけではありませんが、返済の負担として必ず確認されるため、無視はできません。
そして融資の実務感でいくと、借入総額が年収の20倍から25倍と大きくなってくると、それまでと同じ金融機関では次が出にくくなるケースが増えてきます。
年収は融資の入り口を開けてくれます。しかし買った後まで融資を保証してくれるものではないのです。
ここがいちばん意外に感じられるところだと思います。収支は確かに黒字です。ただ、いくら残っているかを見ていきましょう。
経費には管理費、固定資産税、火災保険、共用部の電気代、清掃、消防、そして将来の修繕への備えまで含めています。ちなみに営業資料では年間150万円という数字でした。経費を家賃の14%で計算していたため、その差が出てしまっています。
では満室でなくなったらどうなるか。8戸のうち1戸で退去が出て、次が決まるまで3ヶ月かかったとします。
年60万円のうち約47万円が消えて、残りは13万円。2部屋空いてしまえばその年は赤字です。満室でも年間60万円しか余白がない。実はかなり薄い収支なのです。
この物件の表面利回りは5.8%です。東京23区の新築ですので、特別おかしい数字ではありません。
ただ弊社が扱っている神奈川県内の新築物件では、エリアによっては6.5%から7%ぐらいある物件もあります。
同じ1億5,500万円でも表面利回りが6.5%なら、家賃は年間1,000万円を超えます。同じ借入額、同じ経費率でも手残りは年140万円前後、月に換算すると12万円近く残る計算です。
1棟目の収益力は、物件を選んだ時点でほぼ決まってしまいます。
評価の見方は金融機関ごとに違います。担保評価を見る銀行もありますし、すべてが積算だけで判断するわけではありません。ただ、収支の余白が薄い物件が追加融資のプラス材料になりにくいのは明確です。
銀行の立場で見れば、金融資産800万円、借入総額2億9,500万円、1棟目の手残りが満室でも月5万円程度。年収1,500万円だけでは補いきれず、否決されてもおかしくない状態でした。
プロフィールの一番上にある「年収1,500万円」という数字は確かに強い。しかし資産・借入・収益の3つを並べて見たとき、銀行からは決して余裕のある状態には見えていなかったということです。
契約前に、ご自身でも数字を出し、営業担当にも確認しておきたい項目です。
4つ目が抜けたまま1棟目を決めてしまうと、今回のご相談と同じ状況になりやすくなります。
立て直せる可能性は十分にあります。やることは3つです。
① 手元の現金を回復させる
これが最優先です。給与から貯める。1棟目の手残りを使わずに残す。大きな支出を抑える。「2棟目の頭金を貯める」という発想ではなく、銀行から見て余裕があると映る水準まで戻すと考えてください。
② 1棟目の運用実績を作る
満室を維持し、きちんと運営できる投資家だという実績を積み上げていくことです。
③ 借入の残高を減らす
これは基本的に時間が解決してくれます。
仮に給与から年200万円、1棟目の手残り60万円も残せば年260万円。現在の800万円と合わせると3年で約1,580万円、5年で約2,100万円になります。
同時に、今の条件が続く前提なら1棟目の元本も年270万円前後減っていき、自宅のローンも減っていきます。現金が増えて借入が減る。この2つが同時に進むので、5年後には借入に対する金融資産の余裕はかなり改善します。
同じ1億1,000万円規模を狙うのか、規模を下げるのかでも、次に進めるタイミングは変わります。規模を下げれば自己資金も借入額も小さくなるため、ここはご年齢と目標設定次第です。
現金・収益・借入。指摘された3つをそのまま裏返せばいいわけです。この3つが改善したところで、もう一度2棟目に挑戦する。これが正しい順番になります。
売却してリセットする方法もあるにはあります。ただし保有期間2年での売却は税務上短期譲渡所得に当たるため、税金が約4割かかってしまいます。
またこのタイミングでの売却は、初期費用を多く出している分、それをペイするという意味でも非常にもったいない。稼働もしっかりできているので、すぐに売るのはあまり得策ではないと考えます。
他の銀行を探し続ける方法については、審査方針は金融機関ごとに違うので、変えたら通るケースも当然あります。
ただし、否決の理由を整理せずに手当たり次第に申し込むのはおすすめしません。短期間に何行も申し込めば、金融機関が信用情報に照会をかけた場合、その照会歴も残ります。それだけで否決されるわけではありませんが、まずは原因の整理が先です。
銀行だけを変えるのではなく、銀行から見られる中身も変えていく。遠回りに見えて、実はここが一番の近道です。
今回のケースは、空室だらけの物件だったわけではありません。東京23区の新築で、今も満室稼働です。
ただ満室でも手残りの余白が薄かった。そこに資産と借入の問題が重なり、次に進みにくくなってしまった。
2棟目で融資に苦労するかどうかは、2棟目を探すときではなく1棟目の買い方で大きく変わります。
これから1棟目を買う方は、契約の前にこの3つを確認してください。
そのうえで、2棟目を狙いやすい状態を維持できるのか。ここまでを見て買ってください。
なお、本記事の数値は特定の条件を置いた事例であり、融資の可否や収益を保証するものではありません。
金融機関の審査基準は一律ではなく、投資家の属性・物件・時期によって異なります。実際のご検討にあたっては、具体的な条件をご確認のうえ慎重にご判断ください。
私の不動産投資とお客機に対しての向き合い方は、物件購入がゴールでは無いということ。
お客様のご資産背景等により最適な物件は異なりますので、メリット・デメリットをしっかりお伝えして、最適のご提案をさせて頂きます。土地仕入→建築→販売→賃貸仲介→管理の一貫体制だからこそ、実現できる安定した不動産経営をご提案させて頂きます。