家賃も本当。満室なのも本当。収支の計算もきちんと合っている。
それでも、実態とはまったく違う物件に見えてしまうことがあります。
「資料の嘘さえ見抜ければ騙されないのでは」というご質問をいただきました。ただ、実際にはそれだけでは足りません。嘘を一切つかなくても、実際よりずっと儲かる物件に見せることはできるからです。
しかもこれは、業者が悪意でやっているとは限りません。営業が普通に資料を作っただけなのに、買う側が勘違いしてしまうケースもかなり多くあります。悪意があってもなくても、結果として実態と違う物件を買ってしまえば同じです。
そこで今回は業者の手口ではなく、投資家が資料のどこで勘違いしやすいのかという視点から、5つの場所をお伝えします。約700棟のアパート投資に関わってきた中で、実際に何度も見てきた見せ方です。
目次
例として、1億円の新築アパートの営業資料を使います。区分マンションでも中古物件でも、金額が違っても考え方は同じです。
この180万円が、どこで目減りしていくのかを順番に見ていきます。
この物件の周辺相場は6万5,000円前後。それに対して資料の家賃設定は7万円です。この5,000円の差が、表面利回りを6.7%に見せている部分にあたります。
「でも実際に7万円で満室なのだから、それが相場では」と思われるかもしれません。ここが一番勘違いしやすいところです。
背景として、今は土地も建築費も非常に上がっています。相場どおりの家賃で計算すると利回りが合ってこないケースが多く、売る側からすると、売りやすい利回りにするには家賃を上げるしかないという事情があります。
そして新築は、新築というブランドだけで一時的に相場より高く決まります。最初の入居者だけは新築プレミアムに家賃を払ってくれるからです。それでも決まらなければ、広告料を上げる、フリーレントをつける、ペット飼育を可能にする、といった条件を足していけば、家賃が高くても決めていくことはできます。
問題は、最初の入居者が退去した後です。2人目からは新築ではなくなり、周辺の中古物件と同じ土俵で比較されます。相場の6万5,000円まで下げないと決まらない、というケースが出てきます。
なお、これは嘘ではありません。今7万円で入居しているのは事実で、資料は今の事実を書いているだけです。営業としても「今は7万円で決まっています」としか言いようがありません。悪意がなくても発生します。
では買う側は何を見ればいいのか。資料の家賃を鵜呑みにせず、相場全体を見ることです。同じ駅、同じ築年数、同じ広さの物件をポータルサイトで10分も調べれば、平米単価を含めて大体の相場は分かります。検討中の物件が他と比べて勝っているのか劣っているのかも、調べれば見えてきます。
仮に相場の6万5,000円で引き直すと、家賃収入は年624万円。48万円減ることになり、手残りは180万円から132万円になります。
「8部屋が実際に埋まっているなら、需要がある証明では」と思われるところです。満室稼働は安心材料になりますし、現在満室なのは事実です。
ただ、その満室をどうやって作ったのかは資料のどこにも書いていません。たとえばこういう方法があります。
こうすれば多少強気な家賃でも一気に埋まりますので、販売の直前に満室を作ることができます。ちなみに弊社は、新築を空室のままお渡しして、入居付けは相場で行っています。
計算してみます。広告料とフリーレント、そして退去後の原状回復費用まで含めると、入れ替わり1部屋あたり20万円前後かかります。8部屋なら年に2部屋くらいは入れ替わりますので、年間で約40万円前後。手残りは132万円からさらに減って、約88万円になります。
満室と書いてあるだけなのに、これだけ減ります。見るべきは次の2か所です。
8部屋全部がここ2〜3ヶ月で一気に決まっているようであれば、販売前に条件を積んで埋めた可能性を疑ってみる。これだけで見え方が大きく変わります。
資料の経費は年94万円。内訳は管理費、火災保険、共用部の電気代、定期清掃、細かい設備対応などです。書いてある数字は全部正しく、計算間違いもありません。
問題は、書いていないものです。この資料には税金が入っていません。固定資産税と都市計画税です。
特に新築は建物に対する固定資産税・都市計画税が高く、この8部屋の新築規模であればおそらく40万円ほどかかります。さらに買った初年度は、不動産取得税も一時金として1度かかります。
これで手残りは88万円から48万円になりました。ここも、営業に悪意がなくても投資家側が勘違いしやすいところです。
資料に載っていないお金は、税金だけではありません。
資料に載っていなくても、税金・修繕・退去のコストは実際には必ず出ていきます。
収支表を見るときは、書いてある数字を確かめるより先にこの3つが入っているかどうかを見てください。入っていなければ、ご自身のシミュレーションで足すか、不動産会社に「この費用はどう計算すればいいですか」と確認するのが確実です。
ここまでの3つは物件の数字の話でした。残る2つは買う人自身の話になります。そして、こちらのほうが厄介です。
この資料の前提条件を見てください。手残りを計算している金利2%、融資期間35年のフルローン。この条件は、誰の条件でしょうか。
買う人の条件とは限りません。金利や融資期間は、年収・金融資産・勤務先といった借りる人のご属性で変わります。
実際に金利2.8%・期間30年になったとしましょう。ここで初めて、この物件は赤字に転落します。
同じ物件、同じ価格、同じ家賃でも、融資条件が変わるだけで黒字の物件が赤字になります。資料の収支は、その条件で借りられた誰かの収支にすぎない、ということです。
資料の最後のページに、こう書いてあります。「10年後に1億円で売却した場合、家賃収入と合わせてトータル約4,000万円の利益」。
ただ、10年後にいくらで売れるかは誰にも分かりません。税金や費用を入れる前の単純計算で並べてみます。
売却価格が1,000万円動くと、利益もそのまま1,000万円動きます。つまりこの利益の大半は、売却に依存しているということです。
ここまで見てきた現実的な手残りに引き直したうえで、10年保有して8,000万円で売却したとすると、単純計算で約300万円のマイナス。資料の4,000万円が、一気に赤字に転落します。
最終的には、家賃収入と売却益を合わせて出したお金が何%で回ったのかをIRRという指標で投資家自身が判断していくことになります。その材料が楽観的な売却シミュレーションだけでは、判断のしようがありません。
最初は普通にいい物件に見えていた資料が、同じ資料のまま赤字の物件に見えるようになりました。5つを振り返ります。
1つ1つは小さなずれです。単体ならグレーですらありません。ただ5つ重なると、最初とはまったく別の物件ができあがります。
だからこそ、資料を見る側がこの5つの場所を知っておく必要があります。嘘を探すのではなく、書かれていない前提を自分で埋めていく。それだけで判断の精度は大きく変わります。
弊社では、長期前提の数字で作られた非公開の物件情報を会員の皆様に優先してご紹介しています。ご自身がどれくらいの融資を受けられるのかの簡易シミュレーションも承っていますので、検討中の資料がある方はお気軽にご相談ください。
なお、本記事の数値は特定の条件を置いた事例であり、収益や入居、売却価格を保証するものではありません。
税額や融資条件、家賃相場は一律ではなく、物件・エリア・時期・投資家の属性によって異なります。実際のご検討にあたっては、具体的な条件をご確認のうえ慎重にご判断ください。
私の不動産投資とお客機に対しての向き合い方は、物件購入がゴールでは無いということ。
お客様のご資産背景等により最適な物件は異なりますので、メリット・デメリットをしっかりお伝えして、最適のご提案をさせて頂きます。土地仕入→建築→販売→賃貸仲介→管理の一貫体制だからこそ、実現できる安定した不動産経営をご提案させて頂きます。