今回は、不動産投資の中でも特にご質問の多い「フルローンで1億円のアパートを購入した場合、実際の手残りはいくらになるのか」というテーマについて、数字を使いながら分かりやすく解説しています。
「フルローンなら自己資金がいらないし、簡単に始められる」そう考えている方も多いのですが、結論から申し上げると、その考え方は非常に危険です。
もちろん、フルローン自体が悪いわけではありません。リスクを正しく理解しないままフルローンを組むことが問題なのです。
不動産投資というと、立地や利回りなど物件選びに目が行きがちですが、実はそれと同じくらい、もしくはそれ以上に重要なのが「融資条件」です。
極端に言えば、不動産投資の成否は融資で9割決まると言っても過言ではありません。
フルローンで多額の借入をすると、当然ながら毎月の返済額は大きくなります。
家賃収入が入ってくる一方で、返済という「固定費」も重くのしかかってきます。
空室が重なった場合や、想定より入居が決まらなかった場合、収入より支出の方が多くなるリスクが一気に高まります。
では、具体的な数字で見ていきましょう。
物件価格:1億円(新築アパート)
満室時年間家賃収入:約650万円
表面利回り:6.5%
融資条件:金利1.9%/フルローン/35年返済
空室率:5%想定
この条件の場合、年間のローン返済額は約391万円になります。
家賃収入650万円に対して、返済が391万円。一見すると「意外といけそう」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、ここで多くの方が見落とすポイントがあります。
返済額以外にも、不動産投資にはさまざまなコストがかかります。
・管理会社への管理委託費
・共用部清掃費
・入居者募集費用
・修繕・メンテナンス費
・固定資産税
・所得税・住民税
これらをすべて差し引いた結果、税引後のキャッシュフローは年間で約50万円前後にまで減少します。
1億円のアパートを所有し、空室リスクや修繕リスクを抱えた上で、年間の手残りが50万円程度という現実です。
このシミュレーションは、金利1.9%が維持された場合です。では、仮に金利が2.25%まで上昇したらどうなるでしょうか。
年間返済額:約413万円(約20万円増加)
税引後キャッシュフロー:年間30〜40万円台
金利がわずかに上がるだけで、手残りは一気に削られてしまいます。
さらに、
・想定以上の空室
・賃料の下落
・突発的な修繕
こうしたイレギュラーが重なれば、キャッシュフローは簡単にマイナスに転じます。
ここで重要になるのが、返済比率とDCR(借入返済余裕率)です。
返済比率とは、「入ってくるお金に対して、どれくらい返済に回しているか」という指標。
DCRは、1.3倍以上が健全な水準と言われています。
この数値が低いと、少しの空室やコスト増で資金繰りが一気に厳しくなります。
また、将来2棟目を購入する際、銀行が1棟目の収支を見たときにDCRが低いと融資評価が悪化する可能性もあります。
同じ物件で、頭金1,000万円を入れたケースも見てみましょう。
借入額:9,000万円
年間返済額:約352万円(約40万円減)
税引後キャッシュフロー:約80万円前後
返済比率も改善され、DCRも安全水準を上回ります。
同じ物件でも、融資設計だけで手残りと安定性が大きく変わることが分かります。
フルローンには、手元資金を温存できる・レバレッジを効かせられる・本業に資金を回せるといった明確なメリットがあります。
ただし、「返済比率が軽い・DCRが1.3〜1.4倍以上・空室期間が短いエリア・手元資金を薄くしすぎない」こうした条件を満たす必要があります。
一方、自己資金がある方は、
・返済比率をコントロールできる
・金利交渉で有利
・複数棟展開しやすい
・リスク耐性が高い
という強みがあります。
最後に、ポイントを3つにまとめます。
①不動産投資は物件よりも融資が9割重要
②返済比率とDCRを見ないと破綻リスクが高まる
③フルローンも自己資金も、設計次第で武器になる
どちらが正解という話ではなく、ご自身の状況に合わせて融資を設計することが何より重要です。
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